議事録のテンプレートはよく見かけますが、実際にどのような内容を記録すべきかは意外と知られていません。初めて衛生委員会を運営・記録するにあたって、議事録に記載する内容をイメージしておきたい担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、初回開催の準備をスムーズに進めるために、衛生委員会の議事録の基礎知識やサンプル、議事録に関するQ&Aなどをご紹介します。

目次
衛生委員会とは、従業員の健康や、職場環境などについて管理者と労働者が話し合う会議のこと。労働安全衛生規則第23条に基づき、50人以上の労働者がいる事業場では毎月1回以上の開催が義務付けられています。
まずは衛生委員会の目的や、必要となる議事録の詳細を確認しておきましょう。
衛生委員会の目的は、従業員が健康に働ける職場環境を整備することです。働く環境におけるリスクを未然に防ぎ、心身の健康を守ることは、従業員の生産性や定着率の向上につながります。

衛生委員会は、議長・衛生管理者・産業医そして衛生に関する知識や経験を持つ労働者など、多様な立場のメンバーで構成されています。
長時間労働者や休職者の発生状況はもちろん、けがや病気の予防といったテーマを産業医が解説する「衛生講話」など、日々の業務に直結するテーマが設けられます。
▼衛生委員会の基本について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
【記事】衛生委員会とは?設置が必要な理由と罰則を正しく理解しよう。
衛生委員会の議事録は、衛生委員会の開催記録として、実施内容・出席者・議題・決定事項などを記録する文書です。衛生委員会を開催した際には議事録を必ず作成しなければなりません。
衛生委員会の議事録は労働安全衛生規則第23条4項に基づき、3年間の保管が義務付けられています。
議事録は単なる会議の記録ではなく、「何を議題とし、どのような議論や判断がなされたのか」という経緯を示す重要な資料です。委員の交代があった場合の引き継ぎ資料としても活用できます。
なお、労働基準監督署の立ち入り調査(臨検)があった場合には、必ず衛生委員会の議事録がチェックされます。保管がないと法令違反とみなされるおそれがあるので、しっかりルールを遵守しましょう。
衛生委員会で審議した内容については、労働安全衛生規則第23条3項に基づき、従業員へ周知することが義務付けられています。形式的な対応で終わらせず、現場での実践・改善につなげるために重要です。
周知方法は、イントラネット・社内メール・掲示など、自社に合った手段を選びましょう。
衛生委員会の議事録に記載する項目の例は、下記のとおりです。
| ▪会議の基本情報 ◦会議名 ◦開催日時 ◦場所 ◦記録者 など ▪出席者・欠席者の氏名と役職 ▪各委員からの報告議題ごとに、話し合いの内容と意見の要点 ▪産業医からの所見・コメント ▪決定事項と次回の予定、宿題事項 |
あとから内容を把握しやすいように、正確かつ簡潔にまとめるように心がけましょう。
それでは実際に、初回開催時を想定した衛生委員会議事録のサンプルを見てみましょう。
【従業員50名規模・一般的なオフィス業務の事業場における初回開催の例】

衛生委員会の立ち上げ時に、何をするべきか不安に思う担当者の方も多いのではないでしょうか。
ここからはスムーズな初回開催に向けた準備のチェックリストや運営のコツをご紹介します。初回だけでなく、衛生委員会メンバーが入れ替わるタイミングでも活用できるのでぜひ参考にしてみてください。
まずは衛生委員会の初回開催に向けた準備ができているか、下記のチェックリストをもとに確認してみましょう。
| 【初回開催チェックリスト】 |
|---|
| □構成メンバーと議長の選定 □年間の会議予定の仮決め □議事録のフォーマット準備 □会議室・時間の確保 □初回の議題案の用意 □資料の事前共有 |
衛生委員会には、衛生管理者や産業医をはじめ、部署を越えた多様なメンバーが参加します。初回はお互いの関係性ができていないことも多いため、まずは場の雰囲気を和らげる工夫が大切です。
初回のアジェンダに簡単な自己紹介の時間を設けておくと、相互理解が深まり、信頼関係も築きやすくなります。
| 【自己紹介の項目例】 |
|---|
| ▪名前 ▪所属部署 ▪普段の仕事内容(簡単に) ▪メンバーへのひとこと |
あらかじめ自己紹介の項目をスライドや配布資料で提示しておくと、各自が安心して話しやすくなり、会議全体の進行もスムーズになるでしょう。
衛生委員会を意義ある場とするためには、初回の冒頭で役割や目的を共有することが重要です。環境衛生の知識に馴染みのないメンバーもいるため、共通認識がないまま議論を進めると、委員会の方向性がぶれるおそれがあります。
「衛生委員会とは何を目的とするものか」「産業医や衛生管理者の役割とは何か」といった基本的な内容を資料やスライドに盛り込んでおくことで、メンバー全員が議論に参加しやすくなります。
衛生委員会の立ち上げ時には、毎回の進め方を初回に共有しておくことも重要です。あらかじめ会の全体像を示しておくことで、次回以降の委員会運営がスムーズになり、参加者の目的意識も高まりやすくなります。
| 【一般的な委員会の進行例】 |
|---|
| ▪前回(前月)の報告 ▪今回の議題の提示・共有 ▪議題ごとの審議 ▪産業医からのコメント・情報提供 |
アジェンダに加えて、各項目でどのような話題が想定されるのかを具体的に示すと、メンバーが今後の委員会進行のイメージをしやすくなります。
衛生委員会の初回開催時に、産業保健活動の年間計画も共有しておくと「何を議題にすればいいかわからない」ということがなくなります。
産業保健活動の年間スケジュールの一例は下記のとおりです。

出典:衛生委員会活性化テキスト|独立行政法人 労働者健康安全機構
▼衛生委員会を意味ある場として運営するためのコツは、こちらの記事をご覧ください。
【記事】衛生委員会を活性化する5つの戦略 !テーマの決め方や上手く回っている企業の運営のコツを紹介
ここまで初回運営のコツをご紹介しましたが、「準備はこれで十分?」と悩む場面も少なくありません。そんな衛生委員会の立ち上げ期に頼りになるのが、実務経験があり、初期段階から提案や助言ができる産業医です。

立ち上げ期から産業医の専門的なサポートを受けることで、委員会の方向性が定まり、活性化や実効性のある取り組みにつながります。
| 企業のフェーズに合う産業を探すには、条件のマッチングが大切です。Carely(ケアリィ)の産業医紹介では、専門スタッフが企業のニーズにあった産業医選びを支援します。 ▶︎「相性のいい産業医をコーディネートする産業医紹介」の詳細はこちら |
最後に、衛生委員会の開催や議事録に関するよくある疑問について解説します。
A. 衛生委員会のオンライン開催(音声通話、チャットなど)は可能ですが、下記の条件を満たすことが前提です。
| ▪資料が確認できる ▪委員同士でスムーズな意見交換が行える ▪必要な議論が十分に行える |
オンライン開催の場合でも、「議論を実施した」という証拠として議事録の作成・保管は必須です。
参考:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について」
A.電子データ(Word・Excel・PDFなど)で議事録を保存することは可能です。
イントラネットなどを活用すると、紙に比べて周知に手間がかからず、空間的な保管場所に困らないというメリットもあります。
ただし、電子データで保存する場合も、労働基準監督署から議事録の提出を求められたときは、すぐに確認・印刷できる状態にしておきましょう。
参考:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条 の規定に基づく安全委員会等の開催について
A. 法令上は義務ではありません。ただし、監査や報告時に信頼性を高めたい場合には、議長や産業医の印を押すこともあります。
A.管理者や委員長が先に発言しすぎると、他の委員が意見を出しにくくなることがあります。
委員長や管理者にはできるだけ最後に発言してもらうなど、発言する順番に配慮したうえで、委員一人ひとりに発言の有無を確認するといった工夫をしてみましょう。
衛生委員会の議事録は、法令上の義務であると同時に、継続的で実効性のある委員会運営の起点でもあります。スムーズに衛生委員会の運営を続けていくためにも、まずは担当者が初回開催に向けて準備を整えていきましょう。
立ち上げフェーズに強い産業医の選任に不安がある場合は、専門のサポートを活用することで、スムーズな体制構築につながります。
| 最初の衛生委員会でつまずかないためには、立ち上げ支援に強い産業医の選任がカギです。 Carely(ケアリィ)の産業医紹介では、衛生委員会の立ち上げに強い産業医選びを支援します。 ▶︎企業のニーズにあった産業医紹介の詳細はこちら |
お問い合わせ・
資料ダウンロードはこちら
Contact