近年、多くの企業が働き方改革や健康経営に取り組むなか、産業医の重要性も高まっています。とくに規模が大きい事業場に勤務する専属産業医には、より多くの役割が求められます。
本記事では、専属産業医の設置基準や企業における役割を解説。専属産業医の探し方や、自社に合う人材を探すポイントもご紹介します。
なお、Carely(ケアリィ)では企業の健康課題や組織風土に合わせた産業医を紹介し、さらに紹介後も企業の健康づくりをサポートしています。Carelyへ産業医の相談をしたい方はこちらをクリックしてください。
目次
産業医は、労働者が安全かつ健康に働ける職場環境をつくるために、事業者(会社や経営者)に対して健康管理上のアドバイスを行う役割を担います。
2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、労働安全衛生法も法改正が実施されました。今後、企業における産業医の役割はますます大きくなっていくでしょう。
産業医の働き方は、大きく「専属産業医」と「嘱託産業医」の2つにわけられます。それぞれの特徴は下記のとおりです。
専属産業医 | 嘱託産業医 | |
---|---|---|
事業場の労働者数 | 常時1,000人以上:1名 常時3,000人以上:2名 ※有害業務を行う事業場は 500名以上で1名 | 50〜999人 |
勤務日数 | 週3〜5日 | 月1〜数回 |
契約形態 | 多くの場合が直接契約 正社員として雇用されるケースも | 業務委託契約が多い |
掛け持ち | 基本的に1つの事業場のみ | 複数の事業場を掛け持ちできる |
報酬 | 専属契約・勤務日数が多いため高額 | 業務範囲や勤務日数に応じて変動 |
専属産業医は、常時1,000人以上の労働者が在籍する大きな事業場で選任が義務付けられている産業医です。
ただし、下記のような有害業務を行う事業場は、従業員500人以上で専属産業医を選任する必要があります。
常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。
また、専属産業医は常勤なので、原則ほかの事業場との掛け持ちができません。ただし、下記の要件をすべて満たす場合には、親会社の専属産業医が子会社などで嘱託(非専属)産業医として兼務することが可能です。
<専属産業医がほかの事業場を兼務できる条件>
1 専属産業医の所属する事業場と非専属事業場との関係について
(1)労働衛生に関する協議組織が設置されているなど、労働衛生管理が相互に密接し関連して行われていること
(2)労働の態様が類似していることなど、一体として産業保健活動を行うことが効率的であること
2 専属産業医が兼務する事業場の数、対象労働者数は、訪問頻度や事業場間の移動に必要な時間を踏まえ、専属産業医としての職務遂行に支障を生じない範囲内とすること
3 対象労働者の総数は、3,000名を超えてはならない(労働安全衛生規則13条1項4号の規定に準じる)
(出典:平成9年3月31日付け基発第214号「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて」)
※専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務する場合の事業場間の地理的要件は、「徒歩や公共交通機関、自動車などの交通手段で1時間以内で移動できる場合」と定められていました。
今般、近年の急速なデジタル技術の進展に伴い、情報通信機器を用いて遠隔で産業医の職務の一部を実施することへのニーズが高まっていることを踏まえ、基安労発0331第2号「「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務する場合の事業場間の地理的関係について」の廃止について」(2021年3月31日)で廃止されています。
専属産業医は事業場内の健康管理室などに所属し、保健師などとともに労働安全衛生規則第14条第1項に基づいて下記の職務に従事します。
次の事項で、医学に関する専門的知識を必要とするもの
・健康診断・その結果に基づく措置
・長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
・ストレスチェック、高ストレス者への面接指導・その結果に基づく措置
・作業環境の維持管理
・作業管理
・上記以外の労働者の健康管理
・健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進措置
・衛生教育
・労働者の健康障害の原因の調査、再発防止
- 厚生労働省「労働安全衛生法に規定する産業医制度
上記のほかにも、職場巡視や衛生委員会への参加、長時間労働者に関する情報把握など、企業において産業医が果たすべき役割は多岐にわたります。
なお、基本的に専属産業医と嘱託産業医で業務に違いはありません。とはいえ専属産業医は勤務時間が長く、従業員や会社との接点も多いぶん、期待される役割も多くなる傾向があります。
専属産業医は常勤として企業と雇用契約を結び、目安として週3〜5日ほど勤務するのが一般的です。なかには正社員として雇用契約を結ぶケースもあります。
専属産業医の報酬は報酬は勤務条件や医師のスキルや経験により変動しますが、目安としては週1日勤務あたり年棒300〜400万程度。週4日勤務なら年棒900〜1,600万円、週5日勤務なら年棒1,000〜2,000万円程度と考えるとよいでしょう。研究日を週1日設けるケースも多く見受けられます。
日本全体で見ると、産業医として実働している医師は医者全体の1割程度。さらに、そのなかで専属産業医として活動している医師は、わずか5%前後とされています。
このように専属産業医を探すのが難しい状況下で、条件に合う専属産業医を見つけるポイントを確認しましょう。
まず専属産業医を探す方法として、例えば下記の手段があります。
多くの場合、条件に合う専属産業医を選出するのには時間がかかります。極力手間を抑えて専属産業医を探すなら、自社の要望をふまえて産業医を選出してもらえる産業医紹介サービスを利用するのがおすすめです。
実際に専属産業医の候補が出てきたとき、下記の3つのポイントを意識して選ぶとミスマッチを抑えられます。
項目 | 内容 |
---|---|
自社が求める勤務条件を クリアできるか | ・依頼する業務に対応できるスキルがあるか ・勤務日数や勤務時間・勤務地など条件が合うか |
人柄や雰囲気が自社に マッチするか | ・企業に寄り添って取り組んでくれるか ・コミュニケーション能力に長け、従業員・経営側双方と調整ができるか |
(紹介サービスを利用する場合) 選任後のサポートが十分か | ・産業医を依頼したあとの困りごとや実務的な課題まで、気軽に相談できるか |
以下の記事では、自社の課題やフェーズに合わせた産業医の選び方を解説しています。産業医面接で使用できる質問リストもありますので、産業医の選定基準をチェックしたい方はぜひご一読ください。
【記事】優秀な産業医を選ぶ5つのステップ/自社にあった最適な産業医の選び方
多くの事業場を抱える企業において、全社的な健康管理が課題となるケースも散見されます。具体的には、下記のような課題が考えられるでしょう。
そのような課題を解決する手段として、統括産業医を選任する方法があります。
統括産業医とは、主に大企業で設置され、企業全体の産業保健活動を統括する産業医のことです。企業全体の産業保健活動の質を向上させ、一貫性のある取り組みを推進するうえで重要な役割を果たします。
ただし、専属産業医としての勤務時間を確保したうえで統括産業医も担えるようなスキルセットと勤務条件がマッチする例は非常に稀です。専属産業医にすべての統括産業医業務を担ってもらうのは難しい場合が多いでしょう。
そのような場合には、制度構築や運用といった統括業務を外部コンサルに依頼する方法もおすすめです。次の項目で解説します。
Carelyの統括管理サービスを利用する場合を例に、外部コンサルと統括産業医を組み合わせながら全社的な健康管理を行う例を紹介します。
本社には、統括産業医と外部コンサルが運営する事務局を設置します。事務局が構築・運用面をサポートしつつ、統括産業医が全社的なルールを策定。これによって、拠点ごとに採用している産業医が各々のルールで産業保健活動を行っている状態を解消します。
Carelyの統括管理サービスは、複数の産業医を抱える企業向けに、産業保健体制の構築・強化を全面支援を実施します。全社的に足並みを揃えて健康経営を進めたい方は、下記リンクからご確認ください。
専属産業医は、大きな事業場で選任が義務付けられる常勤の産業医です。非常勤の嘱託産業医と比べて、企業と密接に関わるぶん求められる役割も大きくなる傾向があります。
ただし日本の医師のなかで、実際に活動している専属産業医の数は限られており、自社に合う人材を見つけるのは簡単ではありません。極力手間を抑えて専属産業医を探すなら、自社の要望を整理したうえで産業医を選出してもらえる産業医紹介サービスを利用するのがおすすめです。
Carely(ケアリィ)は、産業医紹介サービスとして企業の健康課題や組織風土に合わせた産業医を紹介。さらに、紹介後も企業の健康づくりをサポートしています。産業医の選任にお困りであれば、Carelyの産業医紹介へご相談ください。
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