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産業医変更はできる?できない?|手続きと円滑に進めるポイントを解説

産業医は変更できる?できない?

近年、働き方改革や健康経営などの取り組みが広がるなか、時代の流れとともに企業が抱える健康課題は変化してきています。

同時に産業医の役割も、法定業務が中心の時代から企業の生産性を改善するフェーズに移行。企業視点に寄り添った取り組みが求められるようになった結果、健康経営や企業の方針、労働環境に合わせて産業医を選びなおす会社も増えています。

本記事では産業医の変更を考えている企業に向けて、産業医を選ぶ基準や必要な手続き、産業医変更を円滑に進めるためのポイントを解説します。

なお、Carely(ケアリィ)では企業の健康課題や組織風土に合わせた産業医を紹介し、さらに紹介後も企業の健康づくりをサポートしています。Carelyへ産業医の相談をしたい方はこちらをクリックしてください。

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産業医変更・交代を検討すべきケース

企業の健康管理の考え方は時代とともに変化し、より個々の企業に適した取り組みができる産業医が求められています。効果的に健康管理を進めるために、産業医の変更・交代を検討すべき例は下記のとおりです。

  • 例1.産業医が企業を理解しようとしない場合
  • 例2.産業医の業務が不十分な場合
  • 例3.現代の産業医として求められるスキルが不足している場合

順番に解説します。

 例1.産業医が企業を理解しようとしない場合

産業医が企業の業務内容や働き方、企業風土などを十分に理解していない場合、適切なリスク管理や助言ができず、現場とのコミュニケーション齟齬が発生しやすくなります。

例えば近年広がっているリモートワークは、職場のコミュニケーション不足によるストレスや通勤が無くなることによる運動不足といったリスクを孕んでいます。産業医が業務の特徴とそのリスクを十分に理解していない場合、次のような課題が発生するでしょう。

  • 健康管理に必要な情報(勤務時間・社内のコミュニケーション方法・自宅の就業環境など)の収集ができない
  • 従業員の復職時に、在宅勤務の可否の適切な判断ができない
  • 改善のためのアドバイスや情報提供ができない

また、現場の実態や業界特有の働き方への理解不足により、的外れな提案や実効性の低い対策が提示される可能性もあります。このような状況では健全な労働環境の実現や生産性の向上が難しいため、産業医の変更を検討すべきだといえます。

例2.産業医の業務が不十分な場合

産業医による健康管理業務が不十分な場合、企業が法的責任を問われることがあります。従業員の健康管理を担ううえで、産業医は労働安全衛生規則第14条第1項に定められた下記の必須業務を確実に実施することが求められています。

【産業医の必須業務】

  1. 健康診断の実施と事後措置
  2. 長時間労働者に対する面接指導
  3. ストレスチェックと高ストレス者への面談指導
  4. 作業環境管理
  5. 作業管理
  6. 労働者の健康管理
  7. 健康教育・健康相談
  8. 衛生教育
  9. 健康障害の原因調査と再発防止

(出典:産業医の職務(安衛則第14条第1項)|中小企業の事業者の為に産業医ができること

これらの業務の他に、職場巡回や衛生委員会への参加も必要です。なお、法定業務の不履行例として下記のようなケースが挙げられます。


【産業医の法定業務の不履行例】

  • 定期的な職場巡回や面談が不十分
  • 高ストレス者の面談の未実施
  • 健康診断後の事後措置(就業判定など)の不履行

 例3.現代の産業医として求められるスキルが不足している場合

求めるスキルや業務範囲のミスマッチは、企業と産業医の間に乖離を生む可能性があります。産業医側の課題として挙げられるのは、基本的なビジネススキル・コミュニケーション能力の欠如や、ITツールに対するスキル不足など。近年問題になるケースが増えているメンタルヘルスへの対応範囲も、事前に確認しておきたいポイントです。

例えば「メンタルヘルス対策を強化したい」と考える企業に対し、「専門的な助言や従業員面談は対応範囲外」と認識する産業医はミスマッチといえます。

産業医の実務スキルは多岐にわたり、法令遵守や複数拠点統括管理、制度設計など、それぞれ得意分野が異なります。業務範囲やスキルが自社にマッチする産業医への変更は、健康経営を進めるうえで有効です。

産業医を変更できないケースと対処法

産業医とのミスマッチが発生していても、産業医の交代や解任までに時間がかかるケースも存在します。例えば下記のような場合です。

【産業医変更に時間がかかる例】

  • 産業医との相互の承諾や契約上の制約がある場合
  • 経営者や企業との長年の関係性がある場合
  • 後任の産業医が見つからない場合

こうした状況への対処法として、一時的に産業医を2名体制にする方法があります。この方法により、現状を維持しながら課題解決を図ることが可能です。自社の状況や契約書の内容に合わせて、「産業医を変更する」「現状を維持する」「一時的に2名体制にする」いずれの対応をとるか慎重に判断しましょう。

産業医を変更する際の進め方と必要な手続き

産業医をスムーズに変更するためには、変更の流れと必要な手続きを事前に把握しておくことが重要です。下記のステップを順番に解説します。

  • ステップ1:新しい産業医の選出
  • ステップ2:衛生委員会・安全委員会への報告
  • ステップ3:労働基準監督署へ必要書類の届出

 ステップ1.新しい産業医の選出

新しい産業医の選出には、実務と書類作成上の観点から1〜2か月ほどの準備期間を設けることが望ましいとされています。そのうえで、下記のルールを十分に理解しておきましょう。

【14日以内の選任義務】

産業医不在による従業員の健康管理の空白期間を最小限にとどめるため、以下のいずれかの場合は、労働安全衛生規則第13条第1項第1号において、14日以内に新たな産業医を選任しなければなりません。

  • 産業医が辞任・解任になった場合
  • 従業員が50人以上に増加した場合

(出典:労働安全衛生規則 第十三条第一項第一号

なお、企業は14日以内に産業医を選任しなかった場合、労働安全衛生法違反(第120条)により、50万以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

ステップ2.衛生委員会・安全委員会への報告

産業医を変更する場合は、労働安全衛生規則において、おおむね1か月以内に衛生委員会や安全衛生委員会に下記の内容を報告する必要があります。

  • 産業医が辞任したこと・解任したこと
  • 辞任・解任の理由

これは、産業医の身分保障や業務遂行における独立性の保持、専門的立場の中立性を保つ目的によるものです。

ステップ3.労働基準監督署へ必要書類の届出

新しい産業医に変更したら、速やかに管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。労働基準監督署に届け出る書類は下記の3つです。

  • 産業医選任報告
  • 医師免許の写し
  • 産業医の資格を証明する書面

労働基準監督署に届け出る方法は、郵送や窓口だけでなく電子申請も可能です。申請や届出の支援をする厚生労働省のサービスもあるので、利用してみましょう。

 労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス

産業医を変更・交代を円滑に進めるポイント

産業医をスムーズに変更・交代する際に注意するべきポイントは下記の2つです。

  • 産業医の契約書内容を遵守する
  • 業務の引継ぎ時の抜け漏れを防ぐ

順番に解説します。

産業医の契約書内容を遵守する

適切な理由と手続きがあれば、基本的に産業医の変更は可能です。ただし、契約書に定められた期間や条件がある場合は、それに従う必要があります。

企業の一方的な都合で産業医を解任した場合、契約違反や法令違反を追求される可能性があります。産業医を変更する際は、法令や契約内容を遵守し、慎重に行いましょう。

業務の引継ぎ時の抜け漏れを防ぐ

新しい産業医に十分な引き継ぎができていない場合、企業が抱えている健康課題やハイリスク従業員の存在が見落とされる可能性があります。

新しい産業医に引き継ぐ情報の抜け漏れを防ぐため、引継ぎには十分な期間を設けましょう。情報共有をスムーズにするために、あらかじめ健康管理システムを導入して、クラウドで情報を一元化しておくのもおすすめです。

企業価値を高める産業医の選び方・探し方

自社に合う産業医を選んで企業価値を高めていくためには、まずサポートしてほしい課題を明確にしておくことが大切です。そのうえで、どうやって産業医を探したらよいのか下記の2点を解説します。

  • 産業医を選ぶ基準
  • 企業のニーズに合った産業医の探し方と実際の事例

産業医を選ぶ基準

企業と相性のよい産業医を探すポイントは、「企業のニーズに合っているかどうか」。業種や従業員の年齢層、勤務時間などが企業によって異なるように、抱える健康課題もさまざまです。

例えば、持病を抱えながら働く従業員が増加してきたという健康課題がある場合、「治療と仕事の両立支援の経験が豊富か」「フレキシブルな勤務体制や復職支援の知見があるか」など、産業医を選ぶ基準を明確にしておくと、企業のニーズに合った産業医を選びやすくなります。

ただし、企業のニーズにあった産業医を自力で探すのは容易ではありません。

以下の記事では、自社にあった課題やフェーズに合わせた産業医の選び方を詳しく解説しています。産業医の面接時に使用できる質問リストもありますので、企業価値を高めるための産業医の選定基準としてぜひ参考にしてください。

【記事】優秀な産業医を選ぶ5つのステップ/自社にあった最適な産業医の選び方

企業のニーズに合った産業医の探し方と実際の事例

産業医の探し方は主に4つあります。

  • 健診機関から紹介してもらう
  • 地域の医師会に依頼する
  • 人脈で産業医を探す(すでに産業医を選任している企業に相談するなど)
  • 産業医の紹介サービスを利用する

なかでも、成長戦略に合わせた健康管理体制を実現するなら、企業のニーズに適合した産業医を紹介してくれるサービスを利用するのが近道といえます。産業医紹介だけでなく、抜け漏れが起きがちな交代時の引継ぎ業務まで包括的にサポートしてくれる会社を選ぶとより安心です。

例えば、Carelyの産業医紹介を利用した場合、産業医が決定するまでの流れは下記のとおりです。

Carely産業医紹介は、企業が求める産業医の条件や労働衛生状況を十分にヒアリングしたうえで、企業と相性の合った産業医を選出します。この章では実際にサービスを利用した企業の事例をご紹介します。

【Carely産業医紹介の活用事例】

  • note株式会社|産業医選定から産業保健体制構築までをスムーズに実行
  • 株式会社マルハニチロオーシャン|主体的な産業医とともに、健康管理体制を強化

note株式会社|産業医選定から産業保健体制構築までをスムーズに実行

メディアプラットフォーム「note」などを運営するnote株式会社様は、2019年11月に常時雇用する従業員が50人を超える目前で、Carelyの健康管理クラウド導入と産業医の選定を開始しました。

【課題】

  • 企業の成長速度と比例して従業員の不調も増加するおそれがある
  • 労務ではメンタルヘルスの専門的なアドバイスができない
  • 相談業務に割けるリソースが不足している

【ニーズ】

  • 第三者の専門機関から専門的なアドバイスがほしい
  • メンタルヘルス不調になる前に産業医を気軽に活用したい

【成果】

  • 従業員の健康相談に対応できるようになった
  • 気軽に産業医面談を予約・相談できる体制を整えられた

当初は担当者1人で労務を回していて、従業員の健康相談に割けるリソースがない状況が課題となっていました。そこにCarelyを導入したことで、産業医選定から産業保健体制の立ち上げまでをスムーズに実行できた事例です。

参考記事:テレワークでも違和感なく健康管理ができています。紙管理がなくなり出社も必要なくなりました。|note株式会社

株式会社マルハニチロオーシャン|主体的な産業医とともに、健康管理体制を強化

まぐろの加工販売と水産物の商事などの伝統・技術を受け継ぐマルハニチログループ傘下の株式会社マルハニチロオーシャン様。産業医やストレスチェックを別々の会社で契約し、健診は自前で手配するという非効率な状態を解消すべく、Carely健康管理クラウド、産業医、専門職サポートを導入しました。

【課題】

  • 産業医、ストレスチェックを別の会社に依頼しており、非効率だった
  • 産業医との日程調整は、提携会社を介するためレスポンスが遅かった
  • 巡視記録や意見書は、産業医にわざわざ依頼しないと書いてもらえない状況だった

【ニーズ】

  • ストレスチェック、健診結果、面談記録などを1つにまとめて効率化したい
  • 経験豊富な産業医を選任したい
  • 導入後の支援体制がほしい

【成果】

  • 対応のレスポンスがよく、以前の産業医に比べてフィードバックをもらえるようになった
  • 健診結果も面談記録も1つにまとめられ、すぐに情報を探せるようになった
  • 産業医と専門職サポート一緒に、不調者にいち早く気ける仕組みを作ることができた

Carelyの産業医紹介と健康管理クラウド、専門職サポートを同時に活用したことで、企業ニーズにフィットする産業医と出会えただけでなく、不調者予防の仕組みづくりまで整えられた事例です。

参考記事:多様な社員のニーズを踏まえ、Carely保健師と一体で取り組む未来を見据えた健康管理|株式会社マルハニチロオーシャン

産業医変更で企業の健康管理を強化しよう

産業医の変更は、企業の健康管理体制に影響を与える重要な意思決定です。

産業医を変更する主な理由として、企業への理解不足やスキルの不足などが挙げられますが、契約上の制約や後任確保の困難さからスムーズに変更できないこともあります。産業医の変更は、手順をしっかりと理解したうえで着実に進めましょう。

企業の成長に合わせた健康管理体制を実現するためには、まずは「自社が産業医に何を求めるのか」を明確にすることが重要です。そのうえで産業医選定や体制構築に不安がある場合は、総合的にサポートを受けられるサービスの利用を検討するとよいでしょう。

執筆・監修
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この記事を書いた人
Carely編集部

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