産業医
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産業医とは?仕事内容や臨床医との違い、選任義務のルールを解説

産業医とは?仕事内容や臨床医との違い、選任義務のルールを解説

産業医は、働く人の健康を守るうえで欠かせない存在です。しかし、具体的に何をするのか、選任義務はどのタイミングで発生するのかなど、詳しくはわからないという企業も多いことでしょう。

本記事では、産業医の役割や法律で定められた職務、選任の基準など、産業医について幅広く解説します。産業医の選任を検討している企業の担当者の方は、参考にしてみてください。

 

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産業医とは「働くことによる健康被害を防ぐ専門家」

産業医とは、企業で働く労働者が病気や怪我(労災)を負うことを防ぐため、専門的な立場から指導・助言を行う医師です。起源は「軍医」にあり、産業革命によって労働者が増えたことを背景に、産業医という役割が生まれました。

一般の医師が治療を主とするのに対し、産業医は職場環境の改善や健康リスクの防止に重点を置く点が特徴です。

産業医になるために必要な資格・要件

医師免許だけでは、産業医として活動できません。厚生労働省令により、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

出典:産業医とは|公益社団法人東京都医師会

また、労働者の健康管理に必要な労働衛生の専門知識を持つことが法律で求められています(労働安全衛生法第13条)。

産業医資格を持つ医師の現状

産業医資格の取得者は増加しているものの、実際に活動している産業医は資格保有者の半数以下です。つまり、資格を持ちながら活動していない医師が多く、産業医の人数は非常に限られている状況といえます。

産業医の人数は限られている

さらに、活動中の産業医の半数以上は50〜70代が中心で、1〜2社を担当する医師が71.2%、3〜4社が16.4%と、複数の事業場を兼務するベテラン医師が多数を占めています。

参考:厚生労働省|医師会が関わる産業保健の現状

産業医と一般的な医師(臨床医)の違い

産業医と一般的な医師(臨床医)は、どちらも「医師」である点は同じですが、役割や目的、立場などが大きく異なります。主な違いは下記のとおりです。

産業医と臨床医の違い
産業医一般的な医師(臨床医)
主な役割◼︎働ける状態かどうかの判断(就業判定)
◼︎健康障害の予防・職場環境改善
◼︎病気や怪我の診断・治療
活動場所企業・事業場医療施設
契約関係事業主と業務委託契約患者との治療契約
対象者すべての労働者(健康な人も含む)病気や怪我を抱える患者
仕事内容◼︎職場巡視
◼︎健康診断の事後措置
◼︎長時間労働者の面接指導
◼︎就業可否(業務制限)の判断
※治療は行わず、必要に応じて医療機関を紹介する
◼︎診察・検査・診断
◼︎薬の処方
◼︎手術などの治療
企業への影響力事業者に対する勧告権がある勧告権はない
情報の扱い労働者の健康情報を守りつつ、必要な範囲で企業へ意見・情報提供患者情報を第三者へ原則開示しない

産業医の役割は、働く人の健康を守り、安心して働ける環境をつくることです。一方、臨床医はあくまで診療・治療が役割であり、就業可否の判断や労働環境への関与は基本的に行いません。

産業医の業務内容

ここからは、法律で定められている内容を中心に、産業医が担う主な業務をご紹介します。

ただし産業保健は、単に「法律だから実施する」のではなく、「働くことによる健康被害を防ぐ」という目的を達成するために創意工夫をして自社に合う対策をとる必要があります。現在の産業医市場では少ないものの、この観点を含めて積極的にアドバイスをしてくれる産業医が、今後求められるようになるでしょう。

法律上の9つの職務

労働安全衛生法規則では、産業医の職務が具体的に定められています。

1. 健康診断の実施と結果に基づく措置

産業医は、年1回の定期健康診断を含む各種健診について、実施内容への助言を行い、結果に異常がある労働者に対して評価や指導を行います。検査値や症状を踏まえ、「通常勤務」「就業制限」「休業が望ましい」といった就業判定を行うのが役割です。

必要に応じて、業務内容の調整、配置転換、残業や深夜勤務の制限などまで踏み込んで、意見書として事業者に提案します。

【関連記事】産業医が担う健康診断の役割とは?実施前から就業判定・事後措置まで流れで解説

2. 長時間労働者に対する面接指導と措置

過重労働による健康障害を防ぐため、一定以上の時間外労働が続いた労働者に対しては、産業医との面談が制度上義務づけられています。面接では、疲労の蓄積状況や睡眠・生活習慣、メンタル面の状態などを確認し、働き続けて良い状態かを総合的に判断します。

その結果、残業時間の削減、夜勤・交代勤務の調整、休業や配置転換などが必要と判断される場合には、産業医が事業者へ意見として提示します。

【関連記事】産業医面談とは?人事担当者が知るべき目的や流れ、従業員の不安を解消するポイントを解説

3. ストレスチェックと高ストレス者への面接指導

常時50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施が義務化されています。産業医は、高ストレスと判定された労働者から申し出があった際には面接指導を行い、心身の状態を確認します。

その結果を踏まえ、必要な就業上の配慮や職場環境の改善策を企業へ提案することも産業医の役割です。

【関連記事】ストレスチェック後の産業医面談とは?高ストレス者の対応や流れを解説

4. 作業環境の維持管理

従業員の健康に影響を与えない環境を維持するため、産業医は作業環境が適切に管理されているかを確認します。

確認項目は職場の種類によって異なります。例えばオフィスでは、室温・湿度・換気・照度・騒音といった要素が対象です。一方、工場や有害物質を扱う現場では、換気設備・粉じん・化学物質への曝露・保護具の使用状況など、安全衛生に関わる幅広い点をチェックします。

問題がある場合は改善策を助言し、健康リスクを未然に防ぎます。

5. 作業管理

休憩が適切に確保されているか、無理のない作業姿勢か、夜勤・交代勤務の負荷が過度でないか、保護具や手順が守られているかといった観点で、産業医が職場の状況をチェック。これらを踏まえ、腰痛などの不調を防ぐ取り組みや、安全性を高める就業体制の改善を提案します。

6. その他の労働者の健康管理

産業医は、健康診断やストレスチェック以外でも必要に応じて労働者の健康を支援します。

体調不良や持病に関する就労相談、休職・復職時の就業判断や配慮事項の検討をはじめ、メンタルヘルス不調が疑われる場合には対応方針や職場としての支援体制を提案し、無理なく働ける環境づくりに貢献します。

7. 健康教育・健康相談・健康増進のための措置

従業員全体の健康意識を高めることも産業医の重要な役割です。生活習慣病やメンタルヘルスをテーマに社内研修・セミナーを行うほか、希望者には個別相談も実施します。

また、インフルエンザや熱中症など時期ごとのリスクに応じて注意喚起を行い、日常的な健康トラブルの予防につなげます。

8. 衛生教育

安全衛生に関する基本的な知識をわかりやすく伝えることも産業医の役割です。職場ルールや行動の背景にある医学的根拠を説明することで、従業員が納得して安全衛生行動を取れるようにします。

9. 健康障害の原因調査と再発防止のための措置

職業性疾病や労働災害が発生した際には、産業医が医学的・衛生学的な観点から原因を調査することも重要な役割です。
作業条件や環境面の課題、個人要因との関連などを分析し、再発防止につながる改善策を事業者へ提案します。こうした内容は衛生委員会などで共有され、組織的な改善へとつながります。

その他に求められる活動

産業医は、法令で定められた職務に加えて、次のような活動も担います。

活動1. 職場巡視

産業医は、少なくとも月1回以上作業場を巡視することが義務づけられています(労働安全衛生規則第15条)。巡視では、次のような視点で職場環境を確認します。

◼︎オフィスの照明・明るさ
◼︎温度・湿度・換気の状態
◼︎通路の確保状況、整理整頓の度合い
◼︎パソコン作業時の姿勢や作業環境
◼︎有害物質を扱う現場での換気状況
◼︎マスクや手袋などの保護具の適切な使用状況
◼︎非常口・消火器・防災備品の配置および管理状況
◼︎休憩スペース、トイレ、給湯室などの衛生状態
◼︎職場における受動喫煙対策の適切さ

書面では把握できない現場の実態を確認し、不適切な点があればその場で助言、または衛生委員会で改善策を提案します。日常的な環境改善に直結する重要な業務です。

【関連記事】産業医の職場巡視は必須?法的義務・頻度・流れまでわかりやすく解説

活動2. 衛生委員会への参加

常時50人以上の労働者がいる事業場では、「衛生委員会」または「安全衛生委員会」を毎月開催することが義務付けられており(労働安全衛生法第18〜19条)、産業医は専門家として参加します。
委員会で扱われる議題の例は下記のとおりです。

◼︎健康診断結果の概要
◼︎健康診断後の事後措置の実施状況
◼︎長時間労働の実態
◼︎過重労働者への面接指導の実施状況
◼︎職場巡視で指摘された事項と改善の進捗
◼︎労働災害やヒヤリハット事例の共有
◼︎労災再発防止策の検討
◼︎感染症対策の状況
◼︎メンタルヘルス対策に関する議題

産業医はこれらに対して医学的・衛生学的観点から助言を行い、職場改善に貢献します。

【関連記事】衛生委員会とは?設置が必要な理由と罰則を正しく理解しよう。
【関連記事】安全衛生委員会の基礎知識。メンバー構成や罰則、運用のポイントをご紹介

産業医の選任義務

企業には、一定規模以上の労働者を抱える場合、産業医を選任し健康管理体制を整備する義務があります。ここでは、選任が必要となる基準や産業医の種類、50人未満の事業場が取れる選択肢について解説します。

産業医の選任は「従業員50人以上」から義務となる

産業医を選任する必要があるのは、「常時使用する労働者が50人以上」の事業場です。この人数に達した場合、選任日から14日以内に産業医を選任し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

対象となる労働者には、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も含まれます。また、派遣社員は派遣元企業だけでなく、実際に働いている派遣先の人数にも算入される点は押さえておきましょう。

【関連記事】産業医の選任義務を解説!労働者数別の設置基準や必要人数、罰則の規定とは?

嘱託産業医と専属産業医の違い

産業医には、大きく分けて非常勤で関わる「嘱託産業医」と、企業に常駐する「専属産業医」の2種類があります。

嘱託産業医は、月に1回から数回、あらかじめ決められた時間に事業場を訪問して産業医業務を行います。普段は病院やクリニックで臨床医として働いており、その業務と並行して企業の健康管理に関わるケースが一般的です。

一方、専属産業医は企業に常駐し、週の大半をその事業場で勤務します。人事・労務部門と日常的に連携しながら、健康管理体制の設計や運用、組織全体の安全衛生施策の推進など、より深く企業に入り込んだ役割を担う点が特徴です。


なお、どちらを何名選任すべきかは、事業場の労働者数や有害業務の有無によって異なります。

産業医の選任義務の人数

多くの企業はまず嘱託産業医から始め、事業規模の拡大などに応じて専属産業医への切り替えを検討します。

【関連記事】専属産業医とは?嘱託・統括産業医との違いや業務内容も解説


勤務形態による報酬相場の違いなど、産業医の費用はこちらで詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。
【関連記事】【完全版】産業医にかかる費用まとめ|報酬相場や追加料金が発生しやすいポイントまで徹底解説

従業員50人未満の事業場はどうすればいい?

従業員が50人未満の場合、産業医の選任義務はありません。ただし、これは「選任義務がない」というだけであり、安全配慮義務などの責任が免除されるわけではない点には注意が必要です。

特に、月80〜100時間を超える残業者がいる場合は、規模に関係なく本人の申し出に応じて医師による面接指導が必要となり、その記録を5年間保管する義務があります。そのため、50人未満の事業場が取り得る主な選択肢は次のとおりです。

【50人未満の事業場の選択肢】

◼︎地域産業保健センター(さんぽセンター)の活用
◼︎任意での産業医・顧問医との契約

地域産業保健センターは国が設置した公的機関で、健康相談や面接指導などを原則無料で受けられる点が特徴です。

一方で、企業規模が小さくても、メンタルヘルス対策や従業員のエンゲージメント向上、離職防止、採用強化といった目的から、任意で産業医と契約する企業も増えています。自社の規模や業務リスクに応じて、どのレベルの健康管理体制が必要かを検討することが重要です。

【関連記事】産業医は中小企業でも必要?いない場合に困るケースや相談先を解説!
【関連記事】産業医の探し方|初めての選任で失敗しない4つのポイント


もし自社の業務内容や風土に合う産業医を探すなら、専門知識をもつプロに相談するのがおすすめです。

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産業医制度を正しく理解し、従業員の健康を守ろう

産業医は、従業員の健康被害を防ぎ、安心して働ける職場環境を整える専門家です。法律では、健康診断結果に基づく措置や長時間労働者への面接指導、職場巡視などの職務が定められていますが、その根底にある目的は「従業員が健康に働き続けられる状態を守ること」にあります。

従業員50人以上の事業場では産業医選任が義務となりますが、50人未満でも安全配慮義務がなくなるわけではありません。地域産業保健センターや産業医の任意契約など、企業規模に応じた健康管理体制の確立が必要です。

自社の規模や業務リスクに応じて、健康管理体制を整えていきましょう

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